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「フォーエバー21」を破綻に追い詰めた消費者や市場の変化とは。

みなさんこんにちは。和田康彦です。

2019年9月29日、米フォーエバー21(FOREVER21)の経営破綻が伝えられました。9月25日には、日本からの撤退も発表。10月末をもって国内14店舗とオンラインストアはすべて閉鎖される予定です。

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フォーエバー21は、韓国からアメリカに移住したドン・チャンとジン・チャン夫妻が1984年ロサンゼルスで創業。市場トレンドを取り入れたデザインをトップスで5~10ドルという破格の値段で販売したところ大ヒット。その後、ウイメンズアパレルからメンズ、キッズ、アクセサリーへと取扱アイテムを拡大し、最盛期には、57ヵ国815店舗まで成長し、ファストファッション市場を牽引する存在になりました。

日本には2009年、原宿に進出。私もオープン当初、若者でごった返す原宿店を訪れましたが、価格の安さと日本では見られないデザインの奇抜さに大変驚きました。そしてその原宿店も2017年には閉鎖。業績悪化の兆しはすでに数年前から表れていたといえます。

フォーエバー21破綻の要因は「消費者や市場の変化に対応できなかった」ことに尽きると思いますが、いまアメリカで起きている具体的な変化について詳しくみていきましょう。

●米国では大型SC(ショッピングセンター)が苦境に立たされている
米国では1980年代からSCの大量出店に伴い、衣料品や生活用品のチェーン店が増加。フォーエバー21もSCへの出店拡大で店舗網を拡大して成長してきました。店舗面積も平均3500㎡と巨大なスペースに大量の商品を陳列して売上を拡大してきたのです。しかしながら、米国の小売業はアマゾンドットコムなどの台頭で主戦場はリアル店舗からネットへとシフト。大型SCへの集客力は徐々に低下して、フォーエバー21の他、ギャップやH&Mなどの低価格衣料品チェーンの閉鎖が相次いでいます。ギャップは、今後2年間で全米230店を閉鎖することを発表。2017年に経営破綻した玩具大手の「トイザラス」もまだ記憶に新しいところです。また、SCの中核テナントだった大手百貨店も大量閉店に追い込まれています。2019年度にはメーシーズが9店舗、JCペニーは18のフルラインデパートメントと9つのホームファニチャーストアを合わせた27店舗、シアーズは70店舗、ノードストロームも3店舗閉鎖を計画しています。

この結果、米国の大型SCの総面積は2018年1~3月期をピークに減少。クレディスイスでは、今後全米SCの20~30%が閉鎖に追い込まれる可能性があると予測しています。また米コアサイトリサーチの調べでは、2018年の米国小売業の閉店数約5500店に対して、2019年1~9月はすでに8500店を超えており、同時期の閉店数8567店から開店数3486店を引いた純減数は5081店で、2年連続の純減に。2017年~2019年3年間で米国の小売店は約1万店も減少することが報告されています。

●猛威を振るう「アマゾンエフェクト」
1994年ジェフ・べゾスが創業したアマゾンのコンセプトは「地球上で最も豊富な品揃え」。取扱アイテムを書籍から家電、日用品、食品、ファッションへと拡大し今や数億種類以上の品揃えで他社を圧倒しています。「地球上で最もお客様を大切にする企業であること」を理念に、スピード重視の配送サービスやプライム会員といったこれまでになかった顧客体験を創造することで、2,018年度のシステム部門の売上を除いた全米売上は1413億ドル。、10年間で14倍の成長を果しています。増収額も加速しており、2016年度は160億ドル、17年度は263億ドル、18年度は352億ドルにのぼっています。この結果、アマゾンのアメリカでのネット通販シェアは4割超といわれており、アマゾンが他の小売業に及ぼす影響が年々拡大しています。2011年には書店大手の「ボーダズ」、2015年には家電販売の「ラジオシャック」、2017年には玩具大手の「トイザラス」そして先日はファストファッションの「フォーエバー21」がアマゾンエフェクトで経営破綻に追いこまれています。USB証券では、2018年~26年の間に約7万5千店が閉鎖し、そのうち衣料・アクセサリー店は約2万店と最大になると予測しています。アマゾンでは、プライム会員向け無料試着サービス「プライムワードローブ」をスタート(不要なものは返品OK 返品送料無料)。ファッション分野を強化に向けた取り組みが進んでいます。

●国内SCも淘汰の時代へ
総務省の経済センサスによると、2016年の日本の小売業は10年前に比べて約2割減少しており、国内でも今後小売業の淘汰が始まっていくことが予測されます。日本のEC化率は6.22%(2018年)と米国の10%超に比べるとまだ低いものの、今後は伸びていくことが予測されます。つまり、アマゾンエフェクトの波はすぐそこまで来ているといっても過言ではありません。そんな目でSCを歩いてみると、このところ空き店舗が目立ってきていることに気づきます。SC向けシステム会社のリゾームによると、1500㎡以上のSCに入居する総テナント数は2018年3月時点で13万8579店。この1年間で約9200店舗も減少しています。そのうち半数近くの4200店舗はファッション・雑貨系のテナントで、フォーエバー21の破綻は他人事でないことがわかります。

●生き残りをかけたSC間の競争がし烈に
日本ショッピングセンター協会によると、2018年末時点の総SC数は3220で統計でみると、増加傾向にあります。ただ既存店SCの売上高は前年比0.6%増でわずかに前年を上回っている状況といえます。一方で、国内2018年のEC市場規模は約18.0兆円で前年の16.5兆円から8.96%拡大。ECがリアル店舗に及ぼす影響は年々大きくなっていくことは間違いありません。このところ、地方百貨店のみならず、地方の駅前一等地にあるようなSCも閉鎖が相次いでいます。今後は、生き残りをかけた競争がさらにし烈になっていくことが予想されます。

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●素晴らしい「顧客体験」をどのように提供するか
ある調査によると、アパレル企業の場合、店舗だけで購入する顧客は70%、ECだけで購入する顧客は20%、店舗とEC両方で購入する顧客は10%という結果が出ています。ただ、店舗だけで購入した顧客の購入額を100とした場合、ECだけの顧客の購入額は67、店舗とEC両方で購入した顧客の購入額は220で、店舗とEC両方を利用する顧客の購入額が驚くほど高いことがわかります。つまり、店舗とEC両方を利用する顧客を増やしていくことが、売上を上げる重要なポイントといえるのです。ECで注文した商品を店舗で受け取ってもらう。ECで見た商品を店に取り寄せて試着してもらうといった「クッリク&コレクト」で店舗への集客力を増やし、オンラインとオフラインの相乗効果をあげていくことが小売業の生き残りの鍵といえます。