女性客から愛される!ライフスタイルマーケティング。

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「ライフスタイル」って何ですか?②世界一幸せなライフスタイル「Hygge(ヒュッゲ)とは?」

みなさんこんにちは。ライフスタイルマーケティングの和田康彦です。
前回は、スマートフォンの登場によって私たちのライフスタイルが大きく変化していることをみてきました。

ところで最近「ワーク&ライフバランス」ということばをよく聞きますが、人間の中には、いつもバランスを取ろうとする働きが内在しているように思います。前回ご紹介したように、スマートフォンの登場によって私たちの生活はより便利に、より合理的に、より機能的になってきました。ただ、その一方で便利さや合理性は享受しながらも、もっと人間らしく、心豊かなライフスタイルを実現したい、という気持ちが芽生え、それとともに新しいライフスタイルトレンドが顕在化しています。

◆世界一幸せなライフスタイル「Hygge(ヒュッゲ)」
みなさんは、「Hygge(ヒュッゲ)」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
デンマーク語で「居心地がいい時間や空間」という意味の言葉なのですが、それが英国や米国のライフスタイル業界で新たなブームを起こしつつあり、日本でもこのところちょっとしたヒュッゲブームが起きています。

パチパチと音を立てる暖炉を囲みながら、手編みの靴下やセーターを着込んだ友達や家族が、コーヒーやケーキを食べてほっこりする時間――。ヒュッゲとはデンマーク人がアイデンティティ並みに重視するコンセプトのようです。

それが最近、デンマーク以外の国で「ヒュッゲを見習おう」という動きが表れているのです。すでに英国では、2年くらい前からちょっとしたヒュッゲブームが起きていて、コリンズ英語辞典は「ヒュッゲ」を2016年に最も話題になった単語トップ10に含めたほどです。また、アメリカのニューヨークタイムズやワシントンポストでも取り上げられ、世界中から注目が集まっています。

◆幸福度ランキングの上位は北欧各国
国連が2012年より150ヵ国以上を対象に行っている幸福度調査によると、デンマークは、スウェーデンやノルウェーといった近隣国を制して、「世界で最も幸せな国」にランクインされています(ちなみに2017年は1位フィンランド、2位ノルウェー、3位デンマーク、日本は51位、アメリカは14位)。デンマークの幸福度が高い理由としては、ワークライフバランス(週37時間労働に加えて、年に最低5週間の休暇)、充実した育児休暇制度や医療制度、男女平等の浸透、低失業率、政治的自由度、低い犯罪率、政治家の汚職が少ない、ただし税率は高いことがあげられます。

日本でも『Hygge(ヒュッゲ) 北欧生まれの「世界一幸せなライフスタイル」実践法』(ピア・エドバーグ著、永峯 涼訳、サンマーク出版)ほか、北欧デンマークで古くから大切にされてきたという「心地よさ」の概念である「Hygge(ヒュッゲ)」の魅力を明らかにした書籍が多数発売されています。

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今回は、『Hygge(ヒュッゲ) 北欧生まれの「世界一幸せなライフスタイル」実践法』から、ヒュッゲとはどのようなライフスタイルなのかをみていくことにしましょう。

◆「ヒュッゲ」とは、北欧の国デンマーク生まれの「心地よさ」の概念
まず、「ヒュッゲ」とは、北欧の国デンマーク生まれの「心地よさ」の概念です。具体的には、人とのつながりを通して、あたたかさや癒し、幸福感を得ること。一瞬一瞬を大切にしながら、好きなものに囲まれて過ごすことをいいます。

物理的な居心地のよさを軸としながら、そこには「精神的な幸福感」や「周りとの一体感」も含まれます。自分自身、そして周りの人たちとの親密さ、つながり、あたたかさを丁寧につくっていく。そのアプローチ全体が、デンマーク流の「心地いい」暮らし方なのです。

自分の好きなものに囲まれて過ごし、その時間をいつくしむ「心地いい」暮らし方。家の中で過ごすとき、私的な、自分だけの時間を意識的に楽しむこと。そんな「ヒュッゲ」を実践していると、自然なかたちでシンプルな物事のなかにも喜びを感じられるようになるのだそうです。では「『心地いい』暮らしの基本」とはどんなことなのか、もう少し詳しくみていきましょう。

◆ヒュッゲ流心地いい暮らしの基本 ①シンプル
「心地いい暮らし」の基本の一つ目は、「日々の暮らしの小さなあれこれを愛でる」というシンプルな考え方。というのもデンマーク人は他の国の人たちとくらべ、物質的な豊かさへの執着心があまりないというのです。なぜならモノをため込むことよりも、家族や友人との時間や絆を大切にしているからです。

つまり、人生でもっとも価値のあるもの、もっとも記憶に残る出来事は、えてしてお金のかからないものだという考え方なのです。たとえば公園でのピクニックとか、仲のいい友人とホットチョコレートのカップを手に雪が降るのを眺めるとか、そういう些細なことにこそ価値を見出しているわけです。

その心地よさを知っているからこそ、著者は「誰もが生活の中に少しだけ『ヒュッゲ』のシンプルで心地いい時間の過ごし方を取り入れたなら、もっと幸せな気持ちになり、心に余裕ができておたがいにやさしくなれると思います」と記しています。

◆ヒュッゲ流心地いい暮らしの基本 ②スローダウン
心地いい暮らしの基本の二つ目は、「スローダウン」です。私たちは不安定な世の中に生き、情報過多に苦しんでいます。さまざまな情報がつねに押し寄せてきて、落ち着く間を与えてくれません。To Doリストにがんじがらめになってしまい、一息ついて緊張をゆるめたり、スローダウンしたりすることを忘れてしまいがち。

だからこそ、スローダウンは、心地いい暮らしの大切なキーワードのひとつだといいます。理由は、速度をゆるめることで、自分を取り戻すことができるからです。同書では、「試しに一度、電子機器の電源をすべて切ってしまおう。ろうそくを灯し、携帯電話などの機器類をすべて片づけてしまおう」という提案をしています。

◆ヒュッゲ流心地いい暮らしの基本 ③空気感
そして3つ目が「空気感」です。あたたかさや居心地のよさが滲み出ている雰囲気。安全でおおらかで、ゆったりとしていて、人とくらべたり競争したりしない。それこそが、心地いい暮らしが持つ「空気感」だといいます。大切なのは、すべてを楽しむこと。とはいっても、パーティのようなにぎやかな雰囲気のなかで盛り上がろうということではないようです。もっとくつろいだ、親密なもの、満ち足りて、充足感を得られるものだというのです。あれこれと気を散らせたり、明日やるべきことについて思い悩んだりすることも不要。急ぐ必要はないからです。

◆ヒュッゲ流心地いい暮らしの基本 ④仲間
そして4つ目の基本は「仲間」です。
誰かと心地いい暮らしを実践するなら、相手は一緒にいて楽しい人がいちばん。もちろんそれは、親しい友人や家族、パートナー、隣人、同僚など、あるいは1人でもOK。大切なのは、安心して自分らしくいられる人たちとともに過ごすことだといいます。また仲間は人間とは限らず、ペットも相棒として申し分ないそうです。

◆ヒュッゲ流心地いい暮らしの基本 ⑤オーセンティック
5つ目が「オーセンティック」
「オーセンティック」という言葉の意味を突き詰めていけば、「本物であること」「誠実であること」「地に足がついていること」ということになると著者。また、これは「本当の自分でいること」にもつながるそうです。大切なのは、自分の喜びに忠実に、自分の価値観にしたがって生き、誰かから言われたことではなく、自分の純粋な心の声に耳を傾けること。

ヒュッゲにおいて、オーセンティックであること、つまり「自分らしく生きること」はとても大切です。逆にいえば、自分以外の誰かのふりをしたり、別のイメージを演出しようとしたり、どんな自分を演じようかなどと思い悩んだ瞬間に、ヒュッゲの感覚は失われてしまうことになります。心を開くこと、人に親切にすること、そして自分自身の気持ちをも楽にすること、それこそがヒュッゲなのです。

誰かに認めてもらおうとか、よく思われようとする必要はなし。大切なのは、自分をなにかに見せかけようとせず、自分らしくあることだけに集中し、その瞬間にじっくりひたること。そうすれば心は解放されて楽になり、自分らしい自分を受け入れ、また人にも受け入れてもらえるようになるといいます。つまりは、「なにを持っているか」で自分を評価したり、されたりすることをやめるということなのです。

以上のように、ヒュッゲは北欧で誕生したものですが、まったく異なる環境下にいる私たちにとっても重要な意味を持つように思います。

◆バブル崩壊以降芽生えた「人間らしく生きるとは?」
ところで、このヒュッゲという生活に対する哲学のようなものは、何もここ2~3年前に突然降って沸いたように生まれたわけではなく、日本でいうとバブルが崩壊した1991年ころから芽生えてきた考え方なのです。

戦後日本の経済は一貫して成長曲線を描いてきました。いわゆる高度経済成長期といわれるものです。その後1986年から1991年にかけて、好景気を背景に土地の価格や株価といった資産が異常に暴騰しました。ところが長くは続かず、1991年にはそれぞれが暴落し、倒産する会社も相次ぎました。その後日本は低成長期に入り、皆さんも聞いたことがある「失われた20年」といわれるようになりました。このところ経済は持ち直しているとは言いますが、働く人の賃金はあまり増えていませんので、景気回復の実感がないのも実態のようです。

そんなバブル崩壊を機に、日本は成長期から「成熟期」に入りました。右肩上がりの環境から横ばいあるいは右肩下がりの環境へと変化してきたのです。それによって、今までの高度経済成長期の「つけ」も表面化してきました。環境問題や年金の問題、もっと根源的なことでは「人間らしく生きるとは?」みたいなことです。このような状態は何も日本国内だけの話ではなく、米国をはじめとした先進国でも表面化していきました。

◆健康と地球の持続可能性を志向するライフスタイル「ロハス」
「ロハス」みなさんも聞いたことがある言葉だと思います。
ロハス(LOHAS)の意味は「健康と地球の持続可能性を志向するライフスタイル」の総称です。 LOHASを英語で書くと「Lifestyles Of Health And Sustainability」となり、 その頭文字をつなげたものです。ロハスの言葉の起源は1998年アメリカの社会学者ポール・レイなどが起業協力して開発した マーケティングコンセプトです。 アメリカでは毎年ロハス(LOHAS)市場を拡大の為ロハス(LOHAS)会議が開催されています。 2005年の調査ではアメリカの成人人口の20%強がロハス層だと言われています。

日本では、2000年9月に日経新聞が関連記事を掲載、月刊誌『ソトコト』がロハス特集を組むなど マスメディアが注目したことで広まっていきました。また、LOHAS SUNDAY(ロハス・サンデー)というラジオ番組が放送され、テレビ番組、ロハスな生活(テレビ東京)でも取り上げられました。その後、ロハスの言葉の意味を知り、 ロハスに興味を持ち健康や環境問題への関心の高い人が増えていきます。

ロハス(LOHAS)の概念は明確になっていない部分もありますが、一般的に健康や環境をテーマにした様々な製品・サービスそして団体・個人、またライフスタイルまで含んでロハスと呼ばれているようです。

具体的には以下のようなものになります。
・オーガニック食品、健康志向や環境にやさしい生活製品・サービス
・環境問題やエコロジーに関する運動
・ヨガ、膳、瞑想などの自己啓発
・シンプルライルやスローライフ などですが、
先ほどの「ヒュッゲ」の考え方と似ている部分があるのではないでしょうか。

また反面、ロハス(LOHAS)対する批判的な声もあり、 ロハス(LOHAS)はあくまでもマーケティングコンセプトのために生まれた言葉であり、 売れるためにどうするか?というビジネス的な考えが強すぎるため、 健康や環境にどれだけ良い影響があるのという科学的視点が欠けているという指摘もあります。

とはいえ、「オシャレにかわいくエコを実践しよう」とはじまったロハスフェスタというイベントには、今では毎回約8万人以上の方が来場するまでのイベントになっています。今年も4月20日~22日、27日~30日の期間、大阪の万博記念公園で開催されました。

◆最近では「丁寧なくらし」や「暮らし系女子」「ミニマリスト」も登場
国内にもう少し目を向けてみると数年ほど前から「丁寧なくらし」や「暮らし系女子」という言葉もよく聞かれるようになりました。

こうした「丁寧な暮らし」のアイコンの1人が、NHKのEテレで人気のベニシアさんと言われています。京都大原に住むイギリス人ハーブ研究家のベニシア・スタンリー・スミスさん。ハーブが専門なので、「四季折々にハーブを育て、衣食住のあらゆるシーンに活用。料理やお茶などの食用はもちろん、シャンプーや化粧品、ワックス、洗剤、防虫剤など、ハーブを活用する生活が紹介され、多くの女性のあこがれの的となりました。

彼女を代表とする「丁寧な暮らし」のリーダーたちのキーワードは、季節感、そして手づくり。夏にはお手製のレモンバーム入り梅酒を楽しみ、クリスマスには定番のジンジャーブレッドを焼き、お手製のオーナメントを飾り……という暮らし方です。

一方、「丁寧な暮らし」を前面に出したウェブショップ、キナリノ(https://kinarino.jp/)でも、「めぐる四季を感じながら焼く、日常により添うお菓子」「今日の元気とキレイは自分で選ぶ! 素材を感じる、野菜&フルーツのレシピ集」といった特集が、美しい写真とともに並びます。ヘルシーで美しい生活は、生産者が込めて作った四季折々の食材を丁寧に調理することから……というライフスタイルを提案しているのです。

こうした、季節感のある、厳選された素材を使って自ら作った食べ物、たとえば味噌や梅干し、パンといったものを、ゆったり味わい楽しむ生活は、ここまで述べてきたように、テレビや雑誌で「丁寧な暮らし」として取り上げられています。

このような丁寧な暮らし方というのも、何かヒュッゲと共通するところを感じます。さらに最近では、2015年に注目を集め、新語・流行語大賞にもノミネートされた「ミニマリスト」という言葉もよく聞きます。

「自分にとって本当に必要な物」を一つひとつ見極めて、思い切って少しずつ物を手放していくと、暮らしがスッキリして、物に対する感謝の気持ちまでも持てるようになるという考え方ですが、元々は断捨離ブームが引き起こした現象出ないかと思います。

ここまで見てきたように、スマートフォンをはじめとしたIT技術の進化によって得た便利で合理的な暮らしを享受するとともに、人間らしい、豊かで、温かい暮らし方を求める動きも活発になってきています。今後、IotやAIが私たちの生活の入り込んでくることで、ますますこのような人間らしいライフスタイルを求めるニーズは高まっていくと思います。